牛乳は体にいいのか?悪いのか?
ここ数年、牛乳についての議論は後を絶ちません。
牛乳を含む乳製品を取らない方がいいという意見もかなり増えてきました。
ただ、その中で学校給食や病院給食では必ず牛乳が献立に入っています。
学校や病院の給食で出ているのだから安全なのではないか?
そう考えるのも当然でしょう。
今回はそんな牛乳についてどのように判断すればいいのかをあなたに伝えることにします。
牛乳について知っておいてほしいこと
牛乳の歴史
牛乳についてお伝えする前に簡単に牛乳の歴史について簡単にお伝えしておきます。
日本人が搾乳や牛乳について知ることになったきっかけは、飛鳥・平安時代。
大化の改新の頃に皇室に牛乳が献上され、その豊富な栄養素から「牛乳は人の体をよくする薬」として喜ばれたそうです。
しかし、庶民が飲める飲み物ではありませんでした。
江戸時代に入ると、外国人を見た前田留吉という人物がいました。
彼は外国人の大きな体は牛乳を飲んでいるからだと考え、牛の飼育と搾乳を手がけて販売するようになりました。
これが日本で初めての牛乳の販売となったそうです。
ここからさらに時代が流れ、牛乳が飲用として広まり始めたのは明治4年。
皇室で毎日2回、牛乳が飲まれていると新聞で報道されたことがきっかけでした。
この報道の後、日本中にも牛乳の存在が広まり、牛乳を飲むことが広まっていきました。
僕らの生活に当たり前になったのは牛乳が学校給食に普及したからでしょう。
戦後に当時アメリカで大量に余っていた小麦粉と原乳を、GHQが日本の学校給食で消費しようとしたとも言われたいます。
給食に導入された牛乳は「完全栄養食品」として広まってきました。
しかし、アレルギーや乳がんの危険性が指摘され、現在ではその賛否が分かれています。
さて、なぜ賛否が分かれるのか?
それを知るには牛乳のメリットとデメリットを知っておくことが必要です。
牛乳のメリット?
牛乳が完全栄養食品をなぜ呼ばれているのか?
あなたは知っていますか?
その理由がいわゆるそのまま牛乳のメリットだと考えられています。
◆良質なタンパク質が豊富
牛乳には、タンパク質をはじめ、脂質・炭水化物・レチノール・ビタミンB2・カルシウムなどが主に含まれています。
その中でもタンパク質が豊富です。
牛乳に含まれるたんぱく質には
カゼインをはじめ、ラクトフェリン、ソマトメジン、エリスロポエチン、グリコプロテインなどが含まれています。
これらのたんぱく質は貧血の予防・改善作用、動脈硬化やガンの予防効果、抗菌作用、骨の成長促進、赤血球の形成、ガン細胞転移の遅延さまざまな効果が期待いされているそうです。
◆カルシウムが豊富
おそらく一般的に一番強いイメージはカルシウムでしょう。
牛乳=カルシウムというイメージの人も少なくないのではないでしょうか?
牛乳は日本人に不足しがちなカルシウムも豊富です。
コップ1杯で成人の一日のカルシウム所要量の3分の1を摂取できます。
そのため、カルシウムの基準値が定められている給食に使用されています。
日常的にカルシウムを補給できる食品が牛乳以外にあまりないために数値目標を満たすためには牛乳が使いやすい食品なのです。
このように、各種の栄養素をバランスよく含み、質の高いたんぱく質、不足しがちなカルシムが含まれているために「完全栄養食品」といわれています。
牛乳のデメリット
では続いては牛乳のデメリットについても考えていきましょう。
なぜ、牛乳が危険出されているのか?
その理由を知ることで反対派の意見も理解することができます。
◆お腹を壊す
おそらく、もっともよく聞く意見がこの「乳糖」についてです。
牛乳に含まれる糖質である乳糖は乳児期には分解できますが、年齢を重ねるにつれその分解酵素である「ラクターぜ」が失活してしまうため分解できなくなります。
分解できないまま乳糖を体に入れると、分解されなかった乳糖は大腸のなかで腸内細菌によって発酵し、脂肪酸と炭酸ガスおよび水になります。
発生した炭酸ガスや脂肪酸は腸を刺激して自発運を亢進させます。また、不消化の食物残渣により大腸のなかの浸透圧が高くなります。
難しく言いましたが、簡単にいうと「お腹を壊し、下痢になる」ってことです。
特に日本人は先天的にラクターぜを分解する酵素が多くないので、この乳糖不耐症の人が7〜8割程度だとも言われています。
きちんとして検査をしないと断定はできませんが、牛乳を飲んでお腹をよく壊す人は乳糖不耐症を疑った方がいいでしょう。
つまり、「体の中で分解できずにお腹を壊してしまうから飲まない方がいい」というのが一つの考え方です。
◆アレルギーを引き起こしやすい
続いての理由はアレルギーです。
牛乳に含まれるたんぱく質のカゼインはアレルギー症状を引き起こしやすいと言われています。
実際に即時型食物アレルギーの主要原因食物は鶏卵、牛乳、小麦で牛乳が含まれています。
つまり、牛乳のアレルギーが多いというのは事実だということです。
また、アレルギーの症状は人により程度が異なります。
本人が気づいていなくても実は牛乳アレルギーだという可能性もあります。
その場合、アレルギーによって体にダメージを蓄えていることにになります。
牛乳アレルギーの症状として多いのは消化器症状ですが、それ以外の症状が出ることもあるようです。
日常的に牛乳を飲んでいて慢性的な不調を抱えている人は一度牛乳を疑ってみてもいいかもしれません。
◆乳がんの原因になる
牛乳の最大のデメリットかもしれません。
それが乳がんを引き起こす危険性です。
なぜ、牛乳が乳がんを引き起こすのか?
それは牛乳に含まれる女性ホルモンが原因だと考えられています。
本来、牛は母乳が出ている間は妊娠しません。
これは人間も同じです。
そのため、妊娠中に高まっている女性ホルモンが母乳に含まれることはありません。
しかし、現代の酪農では効率よく牛乳を搾り取るために母乳を出している間にも人工授精させます。
その結果、牛の母乳、つまり牛乳に女性ホルモンが含まれています。
女性ホルモンは乳がんの原因物質です。
つまり、牛乳を摂取することは乳がんの原因になる可能性があります。
なぜ、牛乳を飲むのか?
◆カルシウムが必要?
他にも牛乳のデメリットはいくつか報告されています。
では、なぜこのようなデメリットが報告される中でこれほどまでに牛乳が推奨されているのか?
それは牛乳のメリットである「カルシウム」が最大の理由です。
管理栄養士が献立を考える際には国の定めて栄養素の基準値を満たした献立を立てる必要があります。
毎日の食事の中で国の定めたカルシウムの基準値を満たすのは非常に難しいです。
ですが、牛乳を献立に加えることで比較的簡単にカルシウムの基準値を満たすことができます。
カルシウムが豊富な食品は牛乳だけではありません。
しかし、牛乳であれば手間をかけずに飲み物として毎日提供することができます。
数値を満たすのには牛乳は都合のいい食品なんです。
牛乳のメリットはたんぱく質とカルシウムでした。
ただ、たんぱく質は他にも良質なものはたくさんあります。
ですから、僕らが牛乳を飲んでいる最大の理由は「カルシウム」が豊富だということになります。
ただ、この考えてほしいことがあります。
本当に牛乳からそんなにカルシウムを取らなければいけないのでしょうか?
◆牛乳はカルシウムが豊富?
100gあたりのカルシウムの多い食品ベスト32(水分が40%以上) 単位(mg) | (水分が40%未満のベスト8) | ||||||||
桜えび | 690 | いわしの油漬 | 350 | 厚揚げ | 240 | きょう菜の塩漬 | 200 | 干しえび | 7,100 |
プロセスチーズ | 630 | ししゃも | 350 | バジル | 240 | かぶの葉 | 190 | 煮干し | 2,200 |
しらす干し(半乾燥) | 520 | 油揚げ | 300 | しそ | 230 | このしろ(生) | 190 | 桜えびの素干し | 2,000 |
いかなご | 500 | パセリ | 290 | だいこんの葉 | 220 | めざし | 180 | えびの佃煮 | 1,800 |
あゆ(天然/焼) | 480 | かぶの葉のぬか漬 | 280 | ケール | 220 | ほっけ(開き) | 160 | ひじき(乾) | 1,400 |
カマンベールチーズ | 460 | がんもどき | 270 | つまみ菜 | 210 | からし菜漬け | 150 | えんどう豆(塩豆) | 1,300 |
わかさぎ | 450 | モロヘイヤ | 260 | きょうな(生) | 210 | みそ(豆みそ) | 150 | パルメザンチーズ | 1,300 |
いわしの丸干 | 440 | さばの水煮缶 | 260 | しらす干し | 210 | 小松菜 | 150 | ごま | 1,200 |
これはカルシウムの多い食品の一覧です。
しかし、この中に牛乳はありません。
牛乳のカルシウムは100mlで110mgです。
牛乳=カルシウムというイメージはありますが、実は特別多い食品ではありません。
カルシウムが欲しければ、牛乳である必要はないのです。
ただ、給食では手間と献立作成を簡易化するために牛乳が都合がいいだけです。
日常であれば、カルシウムは他の食品からいくらでも補給できます。
わざわざ、牛乳にこだわる必要はないのです。
◆そもそもカルシムは必要なのか?
では、本題に入ります。
牛乳のメリットはカルシウムが手軽に摂れることです。
特別にカルシウムが豊富な食品ではありませんから、メリットは給食における手軽さです。
ただ、カルシウムは本当に足りていないのでしょうか?
確かに国の基準値から判断するとカルシウムの摂取量は足りていません。
しかし、カルシウムを豊富に摂取している欧米では骨粗鬆症や乳がんの患者は多いです。
そして、逆にカルシウムの摂取量が少ない東南アジアでは骨粗鬆症や乳がんは少ないです。
カルシウムをきちんと基準値通りとったところで本当に健康になるのでしょうか?
僕はおそらくはカルシウムだけを基準値通りに摂取することは意味がないと考えています。
その他のミネラルやビタミン、良質な脂質やタンパク質を摂取する方がいいでしょう。
つまり、カルシウムを基準値に満たすことに労力を使うくらいならその他の栄養素とのバランスが大事。
逆に全体的なバランスが取れていればカルシウムの量が減っても問題ないと考えられるということです。
このように考えた場合、わざわざデメリットが多い牛乳を積極的に摂る必要はないのではないでしょうか?
まとめ
牛乳は嗜好品
いかがでしたでしょうか?
牛乳についての考え方が理解していただけたでしょうか?
ただ、ここに書いてある考えが全て正しいかどうかはわかりません。
栄養学は個人差がかなり影響する学問です。
もしかしたら、牛乳を飲むことが体にとって最良の人もいるでしょう。
しかし、牛乳以外でも牛乳のメリットが得ることができる。
さらに、カルシウムで言えばもっと重要なことがある。
それは単独の栄養素だけを摂ることより全体のバランスです。
バランスが取れていれば基準値ほど必要ない可能性があります。
牛乳は完全栄養食品というよりも嗜好品です。
デメリットを理解した上で飲むかどうかは個人で決めていただければいいでしょう。
あなたはどうします?