管理栄養士の就職先の中でも人気の「直営病院の管理栄養士」
とりあえず直営病院の管理栄養士になれば、資格を生かして働けるのではないか?
そう考えている管理栄養士も少なくないでしょう。
ただ、「委託に働くのは嫌だからとりあえず直営病院の管理栄養士を目指そう」、と言った深く考えずに直営病院を目指す人もいます。
本当に直営病院に就職することはいいことなのか?
実際に日本料理の板前⇒受託給食会社⇒直営病院⇒フリーランス管理栄養士として働いた僕が自身の経験とさまざまな栄養士から聞いた経験をもとに直営病院のメリットをお伝えしようと思います。
管理栄養士が直営病院に就職するメリットとは
1 栄養指導・相談ができる
・力が身につく栄養指導・相談
病院以外ではできないというわけではありません。
しかし、病院で実際に患者さんからお話を聞けることはとても勉強になります。
いまの食生活でなにが問題なのか?
「食」に対してどうような認識でいるのか?
なぜ、乱れた食生活になってしまっているのか?
自分で想像していることとは違う答えが帰ってきます。
受託給食会社で栄養指導・相談ができる可能性はほぼゼロです。
(僕は聞いたことがありません。副業などで栄養指導・相談をしている方は知っています。)
直接、患者さんの声が聞ける栄養指導ができることが病院の最大のメリットではないかと考えています。
また、栄養指導・相談で使う「行動変容ステージモデル」は栄養指導だけでなく、すべての相談業務で使うことができます。
・行動変容ステージモデル
行動変容ステージモデルでは、人が行動を変える場合は「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えます。
行動変容のステージをひとつでも先に進むには、その人が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけが必要になります。
たとえば、乱れた食生活を変えて行くには以下のような段階を踏むことになります。
1 無関心期への働きかけ
・意識の高揚
食事によるメリット・デメリットを知る
・感情的経験
このままでは「まずい」と思う
・環境の再評価
周りへの影響を考える
2 関心期への働きかけ
・自己の再評価
食生活が乱れている自分をネガティブに、しっかりした食生活をしている自分をポジティブにイメージする
3 準備期への働きかけ
・自己の解放
食生活を変えることができる自信を持ち、食生活を変えることを周りの人に宣言する
4 実行期と維持期への働きかけ
・行動置換
不健康な食事を健康的な食事に置き換える
・援助関係
食生活を見直していく中で、周りからのサポートを活用する
・強化マネジメント
より良い食生活をを続けていることに対して「ほうび」を与える
・刺激の統制
より良い食生活を続けられる環境づくりをする
なお行動変容のプロセスは、常に「無関心期」から「維持期」に順調に進むとは限りません。
いったん「行動期」や「維持期」に入ったのに、その後行動変容する前のステージに戻ってしまう「逆戻り」という現象も起こり得ます。
ただ、ちょっとでもより良い状態に進めていくということはとても大切なことです。
そういったときに相手がどのステージにいるのかを見極めて、それにあわせて栄養指導・相談ができる。
これらの5段階に分けて栄養指導・相談ができればどんな仕事だとしても必ず役に立ちます。
教科書を読むだけでは身につかないヒアリング能力を栄養指導・相談を通して身につけられることを目的に病院に就職するのはおすすめです。
しかし、「病院に就職する前に知っておきたい3つのデメリット」で詳しく書きましたが、栄養指導もある程度はマニュアル化されています。
また、病院や国のルールにのっとった栄養指導・相談になってしまうので自分が考えているとおりの栄養指導・相談ができないことは最初から想定しておいたほうがいいでしょう。
僕の場合は病院の栄養指導・相談にふれて勉強にはなりましたが「マーガリン」や「牛乳」が普段の給食に出ること。
「カロリー」をベースにした栄養学であること。
これらに疑問を持ち、自身が考える「食」に対しての考えてと病院とのズレを感じたのでフリーランスになりました。
2 病気に対しての知識を深めたい
・餅は餅屋
病院に来る患者はどういう人でしょうか?
当たり前ですが、病気を抱えている人です。
病院にいればさまざま病気の患者さんに会います。
また、直接会うことはなくても栄養管理計画書などからさまざまな病気の患者を知ることができます。
普通に生活しているよりは確実に病気については詳しくなるでしょう。
僕自身、かつては1つの病気に対しての特徴や治療法をまとめた「病態レポート」を作ってかなり詳しく病気について調べたこともありました。
NSTなどで看護師や薬剤師、医師などの他の医療職と関わる機会が増えてくるとどうしても病気に対しての知識が必要になります。
もし、あなたがもっともっと病気について詳しくなりたいと思っているのなら病院によりますが、少なくとも他の就職先よりはその目的が達成できます。
ただし、、「病院に就職する前に知っておきたい3つのデメリット」でも書いたように働く場所によって業務内容はかなり変わります。
医療の知識をほとんど必要としない直営病院の管理栄養士の現場もあります。
自分がどういった仕事がしたいのか?
それはきちんと考えておくことをおすすめします。
3 転職しやすい
・直営病院にいけばつぶしがきく
病院の管理栄養士を経験している。
これはその他の就職先に転職したいと考えているときにはとても有利に働きます。
また、特定保健指導などのアルバイトをする時には病院での経験はかなり役立ちます。
「管理栄養士」という名目で募集している場所であれば病院の経験者であれば採用されやすです。
ただ、あくまで「されやすい」だけです。
個人の能力や病院でどのような業務だったのかにもよりますので、絶対的に有利なわけではありません。
ただ、「とりあえず病院に就職しておけばその後のつぶしがきく」この考え方は正しいです。
まだ、自分のやりたいことが固まっていなくて、病気の人と関わり合うのがいやでなければ「とりあえず病院で」という考え方で就職することは間違いではないでしょう。
・後悔しない就職選びを
ただ、僕自身はこの理由で病院に就職することはおすすめしません。
僕は、就職活動時に早く就職活動を終わらせて、楽になりたかったのですが、そういった考え方で就職するとかなりの確率で後悔します。
就職活動は大変なので早く終わらせてしまいたい気持ちはわかるのですが自分の将来に関わることなので真剣に考えたほうがいいです。
「つぶしがきくから直営病院」という考え方ではかなりの確率で後悔します。
もし、直営病院に就職するのなら自分の中でその価値を見出しておいたほうが時間の使い方としてはより効率的です。
どんな職場にもメリット・デメリットがある
メリットだけの職場はない
いかがでしたでしょうか?
直営病院に就職する前に知っておいて欲しかったメリットは以上です。
しかし、メリットばかりではありません。
「病院に就職する前に知っておきたい3つのデメリット」でもお伝えしたようにデメリットもあります。
大事なことはバランスです。
自分が栄養士としてどんな仕事をしていきたいのかを真剣に考えたうえで就職先を選んでください。
僕のように病院勤務での経験を生かして将来フリーランスとして活動するという選択肢もあります。
自分が納得する選択肢を選ぶために情報を仕入れて考えてくださいね。